先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その9 取るべきか取らざるべきか 先生がハムレットになったお話


 「先生、水いぼを取って下さい」と患者さん。


 「どうしたの?水いぼを持ったままじゃいや?」と先生いつもの調子。

 「水いぼを取らないとプールに入れないんです」。

 やれやれ先生また考え込んじゃった。この前も同じ質問で悩んだばかり。今回は水いぼについて話してみるね。

 水いぼって皆さんはどんな物か知っている?正しくは伝染性軟属腫といって、軟属腫ウイルスが原因でできる直径1〜3ミリ位の、丸くて表面に光沢のあるいぼ状のものなんだ。胸やお腹などの皮膚の薄い部分や、脇の下などの擦れるところにできやすいんだよ。

 いぼが大きくなると中央に大きなくぼみができて、中には白いチーズ様のものが入っているんだ。この中にウィルスがたくさん含まれていて、これが皮膚にくっつくことでうつるんだ。プールや入浴などで直接接触してうつると考えられているんだよ。だから保育園やスイミングスクールなんかでは、とっても嫌がられるんだ。それとアトピー性皮膚炎なんかがあって、皮膚がかさかさしていると、よけいにもらいやすいんだ。

 放っておいても半年から1年で自然に治ると言われているんだけど、皮膚科の先生の話では、5年位見ていても治らなかったこともあるんだって。

 治療はいろいろあるんだけど、まず一番目は手っ取り早くピンセットでつまんで取ってしまうこと。もちろん痛いので子どもを看護婦さんが押さえ込むことになるんだけどね。次に薬をつけること。いろんな薬があるけど、効果はもうひとつ。三番目はヨクイニンという漢方薬を飲むこと。はと麦茶に多く含まれているんだけど、これも効果はあまり良くないんだ。

 ここで先生は水いぼを取るべきか取らざるべきかハムレットみたいに悩んでいるんだ。放っておいても治るし害のない水いぼをなぜ子どもを泣かしてまで取らなければいけないのか。でももし取るんだったら少ない内に(早い内に)取ってあげた方がいいと思うし。

 ホームページを見ていてわかったんだけど、一般的に小児科の先生は取るのに反対し、皮膚科の先生は取るのに賛成しているんだ。僕の察するところ、先生は反対派みたい。強いて言えば「時と場合派」かな。すぐには答えは出ないし、こういうのを水掛け論ならぬ水いぼ論と言うんだよ、きっと。


ドラえもん



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