先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その10 毒まんじゅうを食ってはいけないのはなんでだろうの巻


 こんにちは僕ドラえもん。今日は先生の改心の話だよ。

 先生は医者になって26年になるんだけど、治療方針をいろいろ変えてきているんだ。病気についての考え方が時代により変わるから当たり前なんだけど、最近も大きく変えたことがあるんだ。何だと思う?それは抗生物質の使い方なんだよ。抗生物質は使いようによっては毒まんじゅうにもなるんだ。まずそのお話をするね。

 抗生物質はばい菌(細菌)を殺す大切なお薬だよね。たくさんの種類があってよく使われるんだけど、最近問題になっているのがどんな抗生物質にも効かない細菌が増えてきたこと。どうしてだと思う?先生から聞いてびっくりしたんだけど、抗生物質を使いすぎたからなんだよ。最初は細菌も抗生物質に抵抗できないけど、何回も洗礼を浴びているうちにどんどん強いヨロイカブトを身につけてきているんだって。

 「なぜこんなに抗生物質を使ってきたの?本当に使わなければならなかったの?」って先生にきいたんだ。そしたら「外来で、熱が出てきましたって患者さんが来られるけど、この熱の原因はほとんどが風邪で、一番の原因はウイルスなんだ。ウイルスには抗生物質は効かないんだけど、細菌による発熱と区別できないから抗生物質をその都度だしてきたんだよ。」って先生言ってた。「えっ、じゃあ効かないのに熱があるだけで抗生物質を投薬していたの?先生」「そうなんだ、そういう時代だったんだよ、ドラえもん。」と先生苦しい答え。これは先生だけの問題ではないらしい。このように細菌感染でもないのに抗生物質を何回も使うことが一番の原因なんだ。つまり医者の責任ってわけ。でも抗生物質を使わないようにすると、抵抗力のある強い細菌も次第に消えていくこともわかっているらしいんだ。

 そこで、先生は今までの反省をしたんだよ。「熱があるからといって、明らかにウイルス性と考えられるならば、抗生物質は使わないようにするよ。結局はそのほうがみんなのためになるんだよ、ドラえもん。」って思いつめたように話してた。

 人類は今まで細菌が強くなれば新たにもっと強い抗生物質を開発するといった、いたちごっこをしてきたんだけど、人間はもっと知恵を働かして、薬を使わないという選択を今しなかったら、今までに見たことのない怪物を出現させて人類が敗北するかもしれないって先生は考えているんだよ。



ドラえもんいろはカルタ

  くまんじゅう、時には食うのも大切さ 食い方知るのはもっと大切


ドラえもん



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