先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その21 PTSDについて考えようの巻


 明けましておめでとうございます。ぼくドラえもん。今年もよろしくね。


 先生にとって今年も一番気になるのはなんと言っても水害。水害がこどもの心に及ぼす影響が心配なんだって。今年は阪神淡路大震災から10年。そこで今年最初は災害と心の問題についてお話するね。

 PTSDって聞いたことがある?・・これは日本語では心的外傷後ストレス障害と呼ばれているんだけど、このままじゃ何のことだかわからないから説明するね。子どもの心は日常の様々な出来事で傷つくんだけど、特に殺傷・虐待・事故・災害などの生命の危機を感じさせるような深い傷を負った時に起こる心の傷は症状も重く、癒しのための長い道のりが必要なんだ。この深い心の傷をPTSDと呼んでいるんだ。

 水害を例にとると、水が怖い、雨が降るとまた洪水が起きると思ってしまう、怖かったことをすぐ思い出してしまう、表情が少なくなりぼんやりしている、話をしなくなり、引っ込み思案になる、基本的な日常生活も行えなくなる、記憶力や集中力が低下するなどの症状が現れ、いつまでも続くんだよ。

 このような症状は災害直後より半年後の方が出やすいし、男の子より女の子に多いことがわかっている。また上手に言葉で気持ちを伝えることができない年少児ほど症状が重くなるんだよ。赤ちゃんでもミルクを飲まなくなったり、夜寝てくれないなどの症状が出るんだって。阪神淡路大震災でも、10年後の今でもPTSDの症状で悩んでいる人もいるらしい。

 深い心の傷の直後には、まず自分が捨てられるのではないかなどの不安から、人を困らせる行動をとることがあるんだ。そして次に苦しみを心の中に押し込めて、お利口さんになろうとするんだ。子どもは親に甘えたいのに、叱られないように親を安心させようと、災害で受けた不安を自分で押さえ込んでしまうんだ。周りの大人もそれに気付かなくなり、その結果、心の傷が癒されることなく深い場所に隠されてしまうんだ。このような抑うつされた気持ちが原因となって後で様々な症状で出てくるのがPTSDなんだ。子どもが心に大きな傷を負った時には早くから子どもが感情を吐き出せるような配慮が必要なんだよ。

 「怖かったこと、悲しかったことなど、何でもいいからお話を聞いてあげ、そして抱きしめてあげてください。」って先生が言ってたよ。「我慢しなさい」とか「頑張ろう」では心の傷は癒えないんだって。子どもは一人では心の傷を治すことはできない。周りの方々の暖かいサポートがあってこそ癒されるんだ。困ったことがあれば小児科の先生や心理士の方に一度相談されるといいって先生が言ってました。


ドラえもん



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