先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その28 ひっしにひしゅするお話の巻


 皆さんこんにちは、ぼくドラえもん。今日の先生、ちょっと不機嫌。怪しげな写真集の勧誘のダイレクトメールを手にして「どうやってぼくの住所や名前をこの会社は知ったのだろう」。誰かが先生の名簿を手に入れて、送りつけてきたのに間違いないと結論してご立腹なんだ。「おいドラえもん。もし医者が患者さんの情報を漏らしたらどうなると思う?まったく個人情報にみんなルーズすぎるよ」と口調も荒々しい。そこで今日は「個人情報保護法と医療」についてお話をするね。

 医療機関はどんな個人情報を患者さんからもらっているんだろう。「名前、住所、電話番号、病歴、家族歴をはじめとして、診察して知った体の情報、検査データはすべて個人情報なんだ」って。びっくりした。なんだ、病院というのは個人情報で成り立っているんだね。個人情報保護法によると、患者さんから情報をもらったらその都度説明しなければならないらしい。そんな邪魔くさいことはできないから「うちの病院では患者さんからいただいた個人情報は、こういう目的に利用します」と書いてあるポスターを貼っておけばいいんだって。みんなの行く病院には張ってあるかな?

 次に大事なのは病院が患者さんからもらった個人情報は、本人の同意なしに第三者に与えてはいけないということなんだ。当たり前のことのようだけど、これって案外難しい。医者の勉強会では必ず症例報告を行なってる。「こんな患者さんがいました。同じような経験をした先生はいませんか?」って、病気の知識を深めていくんだけど、患者さんに断りをいれて発表している医師はいないと言っていい。たとえば、顔に特徴がある珍しい病気だと、必ず患者さんは公表するのを嫌がられるだろうし、また時には、検査値すべてを公表できなくなったりする可能性も出てくるよね。医学の発展が大切なのか、個人情報保護が大切なのかという問題が出てくるよね。

 もうひとつ重要なことが医療機関に求められている。それはね、患者さんから本人に関する情報を求められた場合には、原則としてその求めに応じなくてはならないっていう「開示の求めに応じる義務」が医療機関にあるってこと。カルテ開示問題が世間を騒がして久しいけど、法律で決まったということだよね。先生はこれまでも外来でコアラノートを患者さんにお渡しして、情報をお互いに共有できるようにしていたけど、それでもまだ情報が足りないと思われている方は、いつでも遠慮なくおっしゃってくださいって、いつも言ってる。そのために紙カルテから電子カルテに変更して、情報を提供しやすく、かつ改ざんできないようにしているんだって。

 なるほど、先生もそれなりに個人情報を大切にしてきたんだね。自分の趣味がばれたから、ダイレクトメールに対して怒っているわけではなかったんだ。


ドラえもん



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