先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その52 感情を育てようの巻


 こんにちは、ぼくドラえもん。5月に麻疹(はしか)の流行があったけど大丈夫だった? 賢明な皆さんはワクチンは打たれていたことと思います。

 最近、小学生や中学生の異常な犯罪がマスコミをにぎわしているけど、なんでこんなことになったのだろう、どうすれば防げるんだろうというのが今日のお話。これは東京学芸大学の大河原美以先生の講演を聴いてきた先生から教えてもらったお話だよ。

 子どもによる殺人や凶悪な犯罪が起こった時、決まって報道されるのは、いまどきの子どもは切れやすいってことだよね。このような子どもは「わがままな子ども」「甘やかされて育った子ども」「しつけられていない子ども」というように思われている。

 でも心理学的に見ると、このように「切れやすい子」つまり「怒りをコントロールできない子ども」には、いろんなタイプがあるんだ。その中でも問題な子どもというのは、あんな良い子がとか、おとなしい子だったのにとか報道されるけど、実際は家庭崩壊のような危機的な家族の中で、いい子でいることが求められていたり、親があまりにも理想の良い子を求めてきたために、良い子の面しか見せることができなかった子どもなんだ。賢すぎた子どもといってもいいかもしれない。親が子育てを手抜きしたわけではないんだよ。

 ここからは、ちょっと難しい話だけどきいててね。人の思い(感情)っていうのは、大きく分けて二つある。うれしい・楽しい・安心といったポジティブな感情と、悲しい・怒り・不安というネガティブな感情の二つ。どちらにしても、これらの感情を言葉にして、相手に伝えて気持ちを分かち合ってもらっているよね。そして相手として、子どもにとって一番大切なのは親、特にお母さんなんだ。うれしいことはもちろんのこと、いやなこと、つらいことがあれば、子どもは泣いてお母さんに訴え、お母さんに抱きしめられて安心し、癒されているんだ。賢すぎる子どもはお母さんに気を遣い、つらい、悲しいといったネガティブな感情を抑えこんでしまうんだよ。結果として、感情やコミュニケーションが育たなくなってしまい、つらいことにも耐えることもできなくなっているんだ。いやなことはすべて「うざい」「だせー」で片付けてしまっているのも同じことなんだ。これが切れやすい子の本質なんだよ。

 ではどうすればよいかっていうと、赤ちゃんからの育て方がとても大切。ちゃんと泣ける子どもに育てること、そのためには、泣いてきた子どもを抱きしめて「つらかったんだね。悲しかったんだね」と感情を言葉で分かち合ってあげることなんだ。親には子どもの感情をちゃんと育てる義務があるんだよ。悲しい時は悲しいと言える感情と言葉を育ててあげてね。


ドラえもん



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