先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その53 ひとは言わなきゃ動かないの巻


 こんにちは、ぼくドラえもん。先生は診察に来る子どもたちとおしゃべりするのが好きなんだけど、この頃うまく会話ができないのが気になっている。何か聞いても「べつに」とか「びみょう」とか「ふつう」で返してくる小中学生。家族とうまく会話ができているんだろうかと、先生は心配しているよ。今回は先生の最近お気に入りの「家族の法則」という本に書いてある、家族の会話についてお話しするね。

 学校に行きたがらない子ども、何かからだの不調を訴える子どもがいると、周りにいる大人たちは、どうしてなのか子どもに話をしてほしいと思うよね。でも案外、大人たちっていうのは、本当は子どもが言葉で何かを訴えているにも関わらず、本気で聞こうとはしていないものらしい。一方、子どもたちも深刻な内容であればあるほど控えめに、しかも忙しい時を狙って、まるで大人の本気度を確かめるように話してくる。こんな行き違いを避けるために、まず子どものSOSパターンについて知ってほしいんだ。

「お母さん、学校が楽しくないから行きたくない」

「そうなの? でもきっと面白いこともあるからがんばってね」

 これで多くの子は治ってしまう。けれど事態が深刻な場合はもっと強い、例えば吃音とかチックなどで自分の辛さを訴えてくる。ここで周りの大人が少し気配りをすれば、多くの子どものは消えてしまうんだけど、もし問題が解決されなければ、次に子どもは身体症状を出してくる。おなかが痛い、頭が痛い、微熱が続くなどの症状だよ。さらにまだ家族の気づきがない場合、最終的に行動という形をとってしまう。例えば、不登校、乱暴、盗み、家出など。こうなるともう、わかってほしいとか、味方になってほしいとか言わない。子どもには、どんなことをしたって親なんかにはわかりはしないんだという歴史のみが刻まれてしまうんだ。

 ここまでにならないためには、子どものSOSをいち早くキャッチできて、なおかつあまり繊細になりすぎない、ちょうどよい感度のアンテナを親が持つことが必要となる。よいアンテナがあれば、こんな会話が可能になるんだよ。

「そう、で、お母さんはどうすればいいの?」

「わからない」

「もし何か思いついたら教えてね、お母さんにできることなら一生懸命してあげるから」

(親は子どもが正しい要求をすれば何だってしてくれる、でも言わなくてはわかってくれないんだ)という「ひとは言わなきゃ動かない」法則を、こんな会話から子どもが知ることになる。そうなると普段から家族との良好なコミュニケーションができている子どもは、必要なら誰にでもSOSを伝えようとするし、親は待つこともできる。結局どんな場面でも、家族の間の会話が普段からうまくできているかどうかが大切なんだね。


ドラえもん



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