先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その56 マイコプラズマ肺炎が流行っているの巻


 皆さんこんにちは、ぼくドラえもん。11月に入ってずいぶん寒くなってきたけど、皆さんはカゼを引かずに頑張っている?ぼくも先生も食欲の秋にも負けず、体重を増やさないように頑張っているんだ。今回は今、保育園で流行っているマイコプラズマ肺炎についてお話するね。

 マイコプラズマっていうのは病原菌の名前なんだ。ウイルスより大きく、細菌よりやや小さい病原菌なんだよ。正確な学名はマイコプラズマ・ニューモニエって言うんだけど、ニューモニエというのは肺炎という意味だから、肺炎を起こすマイコプラズマという意味だよね。

 マイコプラズマが肺に炎症を起こすわけだけど、これに感染した誰もが肺炎を起こすかというとそうではないんだ。案外1才までの小さな子どもに感染しても、肺炎にはならずカゼくらいで済んでしまうものが多いんだ。その代わりに、もし小さい子どもが肺炎を起こしてしまうと重症になることもあるらしいから用心がいるよね。

 先生が若かった頃(今でも若いって先生は横でわめいているけど)マイコプラズマ肺炎は4年ごとに流行していたんだって。それがちょうどオリンピックの開催年にあたるものだから、オリンピック肺炎とも言われていたんだそうだよ。今はそんなこともなく、毎年小流行はみられるんだって。

 症状は激しくて、痰がからまない頑固な咳が特徴で、熱が無いことも多いんだ。保育園や幼稚園で流行っていたら要注意だよね。

 マイコプラズマ肺炎のもうひとつの別名を非定型肺炎とも言うんだ。普通の肺炎とは違うという意味だね。じゃあ普通の定型肺炎というのはどんなのかというと、肺炎球菌による肺炎のことで、発熱や呼吸困難を伴い重症になる肺炎のことなんだ。つまりマイコプラズマは重症になることは多くなく、入院もあまり必要なくて、外来治療で済んでしまうものが多いということなんだ。実際、先生もマイコプラズマ肺炎と診断しても、飲み薬だけで治癒してしまう肺炎を多く診ているんだって。ただしレントゲン写真を撮ると、ド派手な肺炎所見が見られるんだ。そのおかげで、この肺炎が内科であまり有名でなかった頃、結核と間違われて治療されてしまったケースも多かったようだよ。

 治療はというと、一般的によく使われる抗生物質はあまり効かないらしい。エリスロマイシンとかクラリスロマイシンとかアジスロマイシンとか、少し特殊な薬が必要なんだけど、どれも少し苦いのが難点。良薬は苦いものだとあきらめて、先生の指示に従ってね。

 というわけで、マイコプラズマに感染しても、あまりシビアに気にする必要はないってことだよ。ただし飛まつ感染だから、患者さんのよだれや鼻水に注意しておいてね。


ドラえもん



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