先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その62 夢の夢で終わらせないでの巻


皆さん今日は、僕ドラえもん。

 「西脇病院小児科を守る会」の署名もおかげで6万人以上の方々にお名前を戴いて、市長に手渡されました。西脇市民以外の人たちも西脇病院の大切さに気づいておられたってことだよね。「守る会」のお母さんたちも先生も、本当に皆様に感謝しています。ドラえもんもお礼を言っておくね。本当にありがとうございました。

でもね、問題はここからで、この思いが多くの医師に伝わるかどうかなんだ。本当に小児科医が2名以上になればいいのにな・・・

 「守る会」のお母さんたちと先生が署名運動の話し合いをしていた中で、先生たちが気づいたことがあるんだ。医療を受ける側と医療をする側とが医療問題について今までまともに話しもしたことも無い、そして医療者は本当に患者さんの気持ちに触れて医療活動をしていないし、患者さんは医師の気持ちをわかっちゃいないんだろうなということにだよ。

たとえば、コンビニ受診と言う言葉を皆さんも聞いたことがあると思う。24時間いつでも好きな時にさして重症でもない病気で救急を受診される、さながらコンビニに買い物に行く気持ちで夜間でも病院を受診されることだよね。これは医療者がそんな行動をとられる患者さんを揶揄する気持ちで名づけた言葉なんだけど、本当にこの言葉は正確な表現なのだろうか? 本当は、救急を受診したい時っていうのは両親の不安がとても強いんだろうなと考えるのが普通じゃないのかな、と先生は思い至ったんだ。ひょっとしたら 「コンビニ受診」という名称は医療者が親の気持ちを理解しようと思わない証ではないのかなと今先生は考えているんだ。

一方お母さんたちは、医者がどんなに自分の身を削って救急医療を守りたいと思っているのか考えたことがあるんだろうか。俗に36時間連続勤務って言うけど、年に1〜2回そんな状態が起こるのではなく、恒久的にこんな勤務が続くとしたら、どんなつらいことかと思いやる気持ちをもたれたことがあるのかなと先生は思ったんだ。

このように両者には深い溝があるんだけど、今回の「守る会」の活動は画期的で、お互いの気持ちに寄り添おうと言うのが基本にあるんだ。そして署名活動のあとは勉強会をしようとしています。どんな状態ならば救急受診を行い、どんな状態ならば控えるのか、そして子どもの病気そのものについてもいっぱい知識を持ってもらうための勉強会です。そのためには医療者は精一杯手を貸します。これこそが本当の意味の小児医療の再生なんだと先生は考えています。これは小児科の問題だけでなく、西脇の住民が、どんな医療を西脇病院に望み、西脇病院もどのようにしてそんな住民の思いをかなえることができるのかみんなで考え、二者の溝を埋めていくこと、これこそが地域医療の再生、地域の活性化に結びつくって先生は考えています。

 市が崩壊してしまい病院も無くなった夕張市の市民は「今何が一番つらいですか?」と聞かれ、「病院がつぶれたこと。」と多くの人が答えていました。ピンチはチャンス。今一番大切なことをもう一度みんなで考えていってほしいんだ。


ドラえもん



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