先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その92 VPDってなんだの巻


 みなさん今日は、僕ドラえもん。

 朝晩は寒いくらいに涼しくなってきたよね。今年の秋は短いとの予想だけど、先生も僕も体調を崩さず頑張っています。

 今月の話題はVPD。VPDって言葉は皆さんにはあまり聞きなじみがないかも知れないけど、「前もってワクチンを接種することで感染が防げる病気」のことなんだ。具体的には麻疹や、水痘、おたふくかぜ、風疹、ポリオ、ヒブ感染症、肺炎球菌などがあげられる。  

 世界最初のワクチンは天然痘のために開発された種痘ワクチンだったけど、この開発のおかげで、世界中で猛威を奮っていた天然痘は撲滅されてしまったんだ。これほどでなくても、現在ポリオの撲滅の日は間近に迫っているし、麻疹にしても2回接種に取り組んできた国では、発生数が激減しているんだよ。というように、ワクチンの功績は計り知れないんだけど、どういうわけか日本ではあまり注目されていないのが現実なんだ。

 予防もなく治療が難しかった白血病などの小児がんでも、医師たちの非常な努力による医学の進歩で、最近では70%もの子ども達の命が救われるようになったっていう報告があった。これだけ医学が進歩したのに、ワクチンで簡単に予防できるし、また仮にかかっても軽くてすんでしまうことが期待できるVPDなのに、その死亡者や健康障害者は日本では後をたたない。ワクチンの副反応による障害を怖がる人たちもいるけど、本当に病気になり障害をきたした人たちと比較するとその発生率は比べ物にならないくらい少ないのが現実。防げる重大なことを防がないのは、子どもに対する虐待だという医師もいるくらいなんだよ。

 なぜワクチンが普及せず、VPDの被害がいつまでたっても防げないんだろうって考えたとき、今まで感染症という病気をあまり重要視してこなかった国の政策に問題があるのかもしれないって先生が言ってたよ。日本には予防接種法というすばらしい法律がある。良いワクチンを受けやすくして、接種率を上げ、VPDから守ろうというのがこの法律の趣旨なんだけど、法律の不備で予防接種率(予防接種を打った人の割合)が低いのが現実なんだって。とにかくワクチン接種率を上げないと天然痘やポリオのようにその病気の撲滅や激減が期待できないんだよ。

 もうひとつ重要なことは定期接種(無料)にならずに任意接種といって、ご両親の費用負担があるワクチンが多いってこと。日本では7種類しか定期接種化されていないけど、その他にも水ぼうそうやおたふくかぜワクチン、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンなど良いワクチンがいっぱいある。アメリカなどの先進国では数多くの良いワクチンが定期接種化され子どもの健康に寄与している。

 「日本の予防接種の常識は世界の非常識」は小児科医の常識だって先生はつぶやいていました。


ドラえもん



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