先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その94 日本の小児医療を考えるの巻


 明けましておめでとうございます。僕ドラえもん。今年も新たな時を刻み始めました。皆さんは良いお正月をお過ごしですか?

 恒例につき、今年も先生に今年一年の抱負を語ってもらうね。




藤田先生から一言》


 「明けましておめでとうございます。年末に引き続きドラえもんにそそのかされ、お正月ものこのこと紙上に出てきました。私のお正月は、1日は神社に参拝、2日は救急当直、3日は妻の実家へ挨拶と相場が決まっているのですが、今年も例年通り2日から西脇病院での救急当直となりました。というわけで、今年の冬休みは一日遅らせて4日まで休むことにしました。申しわけありません。

 昨年末のドラえもんのポケットで、西脇小学校の児童数が減っていることを話しましたが、実は西脇市全体の子どもの数、もっと言えば日本の子どもの数が20年先にはほぼ半分になるかもしれないほどに減ってきているのです。これで日本はどうなるのかなんて大きなことはこの際置いといて、小児医療はどうなるかを考えて見ましょう。

 私が医師になった30数年前に当たり前にあった麻疹や風疹などの感染症は今ではほとんど見られなくなりました。そして20年前に登校拒否などの心身症が問題になったと思ったら、数年前から自閉症などの発達障害が大きな話題をさらっています。このように小児医療の現場は本当に変化してきています。このような時代の流れの中で、少子はどのような影響を医療現場に落とすのでしょうか。

 まず少子なので子どもはより大切となり、きめ細かな治療が受けられるようになります。子どもにとってはすばらしい時代の到来ですね。一方若い医学生たちは、右肩下がりの小児科を選ばなくなります。小児科医は減少し、小児科医の高齢化が起きてきます。またヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンなどの予防接種が普及すると、小児科医や親を煩わせる怖い感染症が減ります。つまり小児科医が診ても、他科の医師が診ても結果はそう変らないことになります。怖い病気がなくなれば、救急受診者も減少します。また小児科を選んだ若い医師たちは専門分野のみに特化し、一般外来診療には興味を持たないでしょう。こうして我々のような開業小児科医(私たちは自分たちのことを外来小児科医と呼んでいます)は、いずれ消え行くのだろうと思うのです。外来小児科医の手元に残るのは、健康診断、予防接種、発達相談、学校医そして救急くらいでしょうか。これが嫌だという意味ではもちろんありません。病気の質が変ることに私たち外来小児科医も対応しなければならないということだと思っています。どんな社会でも同じでしょうが、こういった変化に敏感でなくては医師といえども生き残れない時代が来ているのですね。「子育て支援」を生涯のテーマにして開業した私には、今こそ真価が問われていると思っています。今年も一年よろしくお願いします。



ドラえもん



トップページ > 先生のおはなし > 連載コラム「ドラえもんのポケット」 > Part2・その94

トップページ > 先生のおはなし > 連載コラム「ドラえもんのポケット」 > Part2・その94