先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その95 咳の薬を考えるの巻


 皆さん今日は、僕ドラえもん。昨年末から本当に寒い日が続いているよね。1月中旬を過ぎたころからこのあたりでもインフルエンザが流行してきたらしいんだけど気をつけてくださいね。

 さて今回の話題は薬のこと。以前から先生は、先生のところにやってくる患者さんのほかの病医院での薬の使われ方が気になって仕方がなかったんだ。必要でない薬が使われていたり、逆に必要な薬が使われていなかったり・・・。そこで今回は薬のことを先生から聞いてきました。

 最近良く目にするのは「咳止めシール」と称されるテープ。診察をするために裸になってもらうと体に貼ってあることが多い。1回貼ると24時間効果が出るし、夜間に咳が出ても貼るだけで簡単なので重宝されているけど、でもあれは正確に言うと咳止めではないらしい。逆に咳を出させる薬って言ったらびっくりするかな。

 効能書きには気管支炎にも効くって書いてあるけど、本当は気管支喘息の治療薬なんだよ。それも今出ている喘息発作を治す薬ではなくて、慢性的な咳を抑えるための薬なんだ。北播磨は他の地域と比べて、喘息の治療が必要なこどもが多いって先生はよく言ってるけど、こんなにテープが使われる必要が無いとも先生は言ってたよ。

 テープにくっついている薬はどういう薬かというと、一言で言うと気管を広げる薬なんだ。小児喘息はアレルギーが原因なんだけど(一番の多いのがダニアレルギー)、喘息発作がでると気管の粘膜が腫れあがり、痰がたまってくる。鼻アレルギーと一緒だね。これは気管に入ってくるダニを痰にくるめて咳をして出してしまおうとする体の防御作用なんだ。ここでもうひとつ重要なのは、喘息が出ると気管が収縮してしまうことなんだ。つまり喘息発作というのは、気管そのものが細くなり、粘膜も腫れあがり、痰が絡むことで、三重にわたり空気の通るスペースが狭くなり呼吸困難をおこすんだよ。

 テープの働きはこの気管の収縮を抑えてあげることなんだ。気管が緩むことで空気が通るスペースが広がり、スペースが広がることで痰も通りやすくなるって仕組みなんだね。つまりテープは咳を出させる薬であって、咳止めではない。少しわかりにくかったかも知れないけど、咳をよく出させることで、結果的に咳を止めましょうということなんだ。

 この薬の副作用は心臓に負担を起こすことなんだけど、テープをはがしても副作用はすぐには消えません。咳があるからといって、喘息でもないのに安易に使用しないほうがいいと先生はいつも言ってるよ。「夜間に貼ったら咳がましになったという話を聞くんだけど?」って先生に聞いたんだ。そしたら、「薬はすぐに効く訳では無く、体に貼ってから6時間くらい経たないと効かない。夜間に貼って咳がましになるのは心理的な効果も多いんじゃないかな。」って先生は言ってました。


ドラえもん



トップページ > 先生のおはなし > 連載コラム「ドラえもんのポケット」 > Part2・その95

トップページ > 先生のおはなし > 連載コラム「ドラえもんのポケット」 > Part2・その95