先生のおはなし

連載コラム「ドラえもんのポケット」

その97 愛の反対は無視することの巻


 皆さん今日は、僕ドラえもん。

 東日本にマグニチュード9というかつて日本人が経験したことの無い大きな地震と津波による災害が起きました。本当に涙するしかないのだけど、「今日本人として、仲間に本当に何をして挙げられるのかをみんなで真剣に考える必要があるんだよ」って先生は言ってました。今回は児童虐待のお話。私たちがやらねばならないことについて先生にお話してもらうね。



藤田先生から一言》


 「平成12年に児童虐待防止法ができて約10年になりますが、今でも虐待で無くなる子どもの報道は後を絶ちません。児童相談所に寄せられる相談の数も約4万件と、20年前の40倍にもなっていますが、子ども虐待は今でも増え続けています。兵庫レポートというのがあります。これは幼い子どもを育てている保護者に対するアンケート調査で、母親による子育ての状況がこの23年間でどのように変化したのかを調べていますが、保護者が虐待をする傾向が強まっているということが解りました。ここには今の保護者の特徴として次の5点が挙げられています。

1)育児に自信が無い親は、自信のある親より体罰を多く使用する。

2)不安やいらいらなどのストレスがたまっている親は、ストレスの無い親より体罰を多く使用する。

3)子どもに拒否感を感じる親(子どもと離れていたいと思うことがある)は、そうでない親より体罰を多く使用する。

4)子どものすることを「あれもいけないこれもいけないと禁止する」親は、そうでないより体罰を多く使用する。

5)体罰をする親は親自身が体罰を受けながら育ったことが多い。

 また兵庫レポートとは別ですが、家族が経済的貧困を抱えていたり、地域で孤立化してしまっていることも虐待が増えてきている原因であるということが大きな社会問題となってきているという報告もあります。

 虐待は繰り返されやすいので、再発防止のために多方面から親と子どもに働きかけがされていますが、最近わかったことがあります。上で述べたように、家庭や環境をみると虐待があってもおかしくないと思われる状態であっても、虐待の再発が見られなかったり、逆にこの程度なら大丈夫と思われる状態でも、虐待の再発が見られるということがあるのです。家庭や環境以外の原因を考えていくうちに次のことがわかりました。虐待を行っていた親が自分自身の問題に気づいていたり、良くなろうという意思があると虐待を再びしないし、虐待を受けていた子どもが親以外に信頼できる大人との関係を持っていると虐待を再び受けないのです。

 虐待を疑えば通報するのは私たち市民の義務です。でも通報するだけでなく、私たちがストレスや不安をいっぱい抱えている親子に気付いてあげ、信頼できる大人として、虐待のハイリスクの親子の頼みの綱になってあげるのも市民の大切な役割ではないかと思うのです。」



ドラえもん



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